◆司馬遼太郎記念館交流ツアー

 去る5月10日、東大阪市から司馬遼太郎記念館の一行百余名が菜香亭を訪れ見学した。
 司馬遼太郎記念館は産経新聞の記者であった司馬氏の財団で、理事長には産経新聞出身の上村さん、理事には朝日、毎日、読売の新聞社関係、中央公論、新潮社、文藝春秋、講談社の出版社、それに建築家の安藤忠雄、作家の三浦朱門など文化関係者が主体のグループで、毎年2月に司馬遼太郎の命日に因み“菜の花忌”として東京は日比谷公会堂、大阪はNHKホールで交互に開催されている。
 宇部空港から山口県入りした一行はまず司馬作品“花神”の大村益次郎ゆかりの里鋳銭司村へ、益次郎夫妻の墓や資料のある郷土館を見学して山口へ。
 市菜香亭に到着したバスツアーの一行は、井上馨直筆の亭名由来書をはじめ明治の総理伊藤博文、山県有朋をはじめ岸信介、佐藤榮作の兄弟総理、そして現在の安倍晋三総理に至るまでの山口県出身総理8名の自筆扁額やかつて菜香亭に来館したことのある田中角栄、竹下登等、それに社会党の加藤勘十氏の書もあって明治初年に開店以来の歴史の積み重ねを偲んだ。
 当日、馬越菜香亭館長から、菜香亭が文化庁によって移築保存されたいきさつについても説明があり一行を代表する司馬遼太郎財団の上村さんは「長州のたどった明治以来の歴史文化が百畳敷の日本間に凝縮されている」と語った。
 しかし菜香亭は政治家のみが目立つ空間ではなく、作家久米正雄が大正末期の婦人雑誌“婦女界”に「天と地と」と通した菜香亭をモデルにした小説を1年間連載したことも当日の夜ホテルで開かれた交流会で私は語ったことだった。
 交流ツアー一行は瑠璃光寺五重塔脇の司馬遼太郎文学碑も訪れ記念撮影をした。


(平成25年6月25日発行第29号掲載)